
コラム
文化
2024.10.20
色と模様で語るインドネシア
インドネシアは1万を超える島々から成り立ち、民族も文化も驚くほど多彩です。その豊かさを一枚の布の中に映し出しているのが「バティック」。ろうけつ染めで模様を描き出す布は、インドネシアの人々にとって単なる衣装ではなく、歴史や願いを伝える大切な存在です。
バティックのはじまり
バティックはジャワ島の宮廷文化の中で発展しました。王族や貴族が身にまとう布には、それぞれ特別な模様があり、身分や立場を表す役割も担っていました。2009年にはユネスコの無形文化遺産に登録され、毎年10月2日は「バティックの日」として国中でお祝いが行われています。
模様に込められた意味
バティックの柄にはひとつひとつ意味があります。
・パラン(斜めの刃模様)は勇気と力を象徴し、かつては王族だけが身に着けられた模様。
・花や植物を描いた模様は豊かさや自然との調和を願うもの。
・ガルーダ(神話の鳥)は守護と力強さの象徴。
布を身につけることは、ただのおしゃれではなく「願いを身にまとう」ことでもあったのです。
色が語るストーリー
使われる色にも意味があります。 茶や藍色は大地や落ち着きを表し、赤や金は祝祭や繁栄を示します。白は純粋さや精神性を象徴し、儀式や祈りの場で使われることが多くあります。模様と色が組み合わさることで、一枚の布はまるで語りかけるように物語を紡ぎます。
今に生きるバティック
今ではデザイナーがモダンにアレンジし、バティック柄はスーツやドレス、日常のカジュアルウェアにまで広がっています。観光地ではお土産として人気ですが、現地の若者も日常的に取り入れており、伝統と現代が溶け合う姿を見ることができます。